透析には様々な検査が付きものです。
施設や病院によって行う検査や検査の項目が違ってくるとは思いますが、ここではメジャーな検査をいくつか紹介していきます。
透析患者に必要な検査
・胸部X線写真
・心電図(12誘導)
・全身骨
・骨密度
・眼底検査
・PWV
・頭部CT
・腹部CT
・腹部エコー
・心エコー
・便ヒトヘモグロビン
- 1 採血項目
- 1.1 生化学検査
- 1.1.1 血清総蛋白(TP)
- 1.1.2 アルブミン(Alb)
- 1.1.3 LDH
- 1.1.4 ALP
- 1.1.5 AST(GOT)
- 1.1.6 ALT(GPT)
- 1.1.7 γ-GTP
- 1.1.8 総コレステロール
- 1.1.9 尿素窒素(BUN)
- 1.1.10 クレアチニン(Cr)
- 1.1.11 ナトリウム(Na)
- 1.1.12 カリウム(K)
- 1.1.13 カルシウム(Ca)
- 1.1.14 補正カルシウム
- 1.1.15 リン(P)
- 1.1.16 インタクトPTH
- 1.1.17 CRP
- 1.1.18 CPK(クレアチニンキナーゼ)
- 1.1.19 β2ミクログロブリン
- 1.1.20 アンモニア(NH₃)
- 1.1.21 血糖値
- 1.1.22 ヘモグロビンA₁C(HbA₁C)
- 1.1.23 ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(HANP)
- 1.1.24 HBs抗原
- 1.1.25 HBs抗体
- 1.1.26 HBe抗原
- 1.1.27 HBe抗体
- 1.1.28 HBc 抗体
- 1.1.29 HCV抗体
- 1.1.30 フェリチン
- 1.2 血算(CBC)
- 1.3 凝固検査
- 1.4 血液ガス
- 1.1 生化学検査
採血項目
生化学検査
血清総蛋白(TP)
アルブミン(Alb)
LDH
ALP
AST(GOT)
正常値:10~40IU/L
コントロール値:10~40IU/L
ASTは、肝臓・心筋・骨格筋・腎臓などに多く存在
臓器の細胞障害により、血中に逸脱して血清AST値が上昇する。
高値:肝細胞癌、心筋梗塞など
ALT(GPT)
正常値:GPT5~40IU/L
コントロール値:5~20IU/L
臓器の細胞障害により、血中に逸脱する酵素
ALTは肝臓などに多く存在
AST,ALTともに高値⇒AST/ALT比チェック
・AST<ALT:慢性肝炎、胆石症など
・AST/ALT比が2倍以上;肝がんなど
γ-GTP
正常値:男性 70IU/L以下 女性30IU/L以下
肝・胆道系の閉塞による排泄障害、肝臓での生成亢進により上昇
腎臓・膵臓、肝臓などに存在
高値:アルコール性肝炎、肝硬変など
総コレステロール
正常値:150~219mg/dl
コントロール値:120~220mg/dl以下
動脈硬化の指標の1つ
高値:甲状腺機能低下症、糖尿病、家族性コレステロール血症など
低値:甲状腺機能亢進症、肝硬変など
尿素窒素(BUN)
正常値:8.0~20.0mg/dl
コントロール値:40~80mg/dl
一般的に腎機能検査として用いられる
透析量の適正さ、蛋白摂取・蛋白代謝を反映
高値:透析不足(ダイアライザー効率、シャント血流量低下)、過剰蛋白摂取、消化管出血
低値:長時間透析、蛋白摂取制限など
クレアチニン(Cr)
正常値:男性:0.61~1.04mg/dl 女性0.47~0.79mg/dl
コントロール値:8.0~18.0mg/dl
食事の影響を受けることが少ないため腎機能をBUNよりも正確に反映する
10mg/dl以下:蛋白・エネルギー栄養不良 筋肉量の低下
ナトリウム(Na)
正常値:134~145mEq/L
透析患者でも血清Na濃度は正常範囲ではあるが低い傾向を示す
低Na血症⇒全身倦怠感、意識障害、悪心など
高値:脱水など
低値;下痢・嘔吐、多飲、浮腫疾患など
カリウム(K)
正常値:3.6~5.6mEq/L二
コントロール地:透析前 3.8~5.5mEq/L 透析後3.0~4.0mEq/L
排泄経路の約90%が腎臓
主に果物・野菜・イモ類に多く含まれる
筋収縮・神経伝達に重要な役割を担う(特に心筋)
高K血症⇒嘔気・嘔吐・倦怠感・しびれ・心停止
迅速な対応、モニタリングが必要
6mEq/L・・・しびれ、嘔吐、倦怠感
7~8mEq/L・・・著明な脱力感、筋肉の麻痺、心電図でP波幅の増大、PQ延長、QRSの幅の増大
8mEq/L以上・・・生命に危険のある不整脈出現(心ブロック、心室細動)
低値:嘔吐・下痢、K吸着剤の過剰投与、長時間透析、インスリンやブドウ糖投与
低K血症⇒筋肉の麻痺
K投与する際は、濃度・速度・尿量・血管痛などの観察が必要
カルシウム(Ca)
正常値:8.5~10.2mg/dl
血清Caの約半分がAlbの増減よってCa値は大きく変動する
リンイオンとカルシウムイオンは血中でそのほとんどが結合している
高値:びたみんD過剰症、癌骨転移などnあど
低値:副甲状腺機能低下症、骨軟化症
補正カルシウム
コントロール値:8.6~10.4mg/dl以下
補正式=実測Ca+(4-Alb)によって調節する
高Ca血症の持続⇒血管石灰化の誘発
低Ca血症の持続⇒二次性副甲状腺機能亢進の悪化
リン(P)
正常値:2.4~4.3mg/dl
コントロール値:透析前 3.5~5.9mg/dl
骨や歯に多く存在し、Caと共存
血清リン濃度は、経口摂取量・腸管での吸収・骨からの遊離・腎臓からの排泄量によって決まる
乳製品・レバー・うなぎ・練り製品・小魚・卵類に多く含まれる
エネルギー代謝、糖分代謝など生体機能の重要な役割をになっている
透析患者は高P血症を示しやすい
高値:蛋白質(主に乳製品)過剰摂取、リン吸着剤の不足、ビタミンDの過剰投与、副甲状腺機能低下症など
低値:蛋白質摂取不足、嘔吐・下痢、リン吸着剤の不足、ビタミンD不足など
インタクトPTH
正常値:10~65mg/dl
コントロール値:60~180pg/ml
副甲状腺から分泌され、血中Ca濃度を高める働きがある
高値:副甲状腺機能亢進症など
低値:副甲状腺機能低下症、悪性腫瘍やビタミンD中毒による高Ca血症
CRP
正常値:<0.30mg/dl
組織の炎症や崩壊がある時に上昇
重症度、経過観察、治療効果などの判定に有用
高値:感染症、関節リウマチ、心筋梗塞など
高値の場合、検温、自覚症状などの確認⇒場合によってはDrより薬剤投与の指示が出ることもある
CPK(クレアチニンキナーゼ)
正常値:男性62~287U/L 女性45~163U/L
コントロール値:30~250U/L
心筋・脳・骨格筋などに存在し、細胞障害により上昇
高値:急性心筋梗塞、心筋炎、脳血栓、脳梗塞、甲状腺機能低下症など
β2ミクログロブリン
正常値:1.0~1.9mg/L
コントロール値:40mg/L以下
腎臓から排泄されているため、透析患者では正常の10倍程度増加
体内で増加すると関節や各臓器に沈着し、手根管症候群などの透析アミロイドーシスを引き起こす
アンモニア(NH₃)
正常値:80μg/dl以下
アンモニアは肝臓で尿素に合成された後、尿中に排泄される
意識障害・痙攣・アンモニア臭・高度の肝機能障害などが認めれた場合に検査を実施
採血後:氷中保存
高値:劇症肝炎、末期肝硬変など
低値:低蛋白血症、貧血など
血糖値
正常値:空腹時血統100mg/dl未満
空腹時血統が126mg/dl以上で糖尿病型と診断される
低血糖:空腹時血統70mg/dl未満
患者に合ったスケールの指示があるため対処時は注意する
ヘモグロビンA₁C(HbA₁C)
正常値:4.6~6.2%(国際基準)
コントロール値:6.5%未満
過去1ヵ月間の血統コントロール状態を反映
透析患者ではやや低値を示す
血糖値は採血する時間帯によって数値は大きく変動するが、HbA₁Cはいずれの時間帯に採血しても大きな変動がない
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(HANP)
正常値:40~60pg/ml
強力なNa利尿作用を有する心房由来のホルモンで体液量、血圧などの循環調節に重要な役割を果たす
心房筋の伸展により分泌調整
透析後には血漿ANP濃度な低下がみられ、体液量の減少をよく反映する
心疾患、高血圧がない場合
ドライウェイトが適正かどうかの判断材料となる
100以上⇒ドライウェイトを下げる
25以下⇒ドライウェイトを上げる
除水量をドライウェイトに設定した際の除水完了時に採血し、氷中保存する
HBs抗原
正常値:(-)
(+)⇒現在B型肝炎に感染していることを示す
感染経路⇒主に血液
HBs抗体
HBウイルス感染の既往、ワクチン接種後、抗HBs免疫グロブリン投与後の経過観察を含めたB型肝炎ウイルスの病態診断として参考にする
HBウイルス汚染の接触によるB型肝炎の発症予防には・・・48時間以内にHBsワクチン・抗HBs免疫グロブリン投与が有効
HBe抗原
正常値:(-)
(+)⇒HBウイルスが血中に多く、感染性が強い状態を示す
HBe抗体
正常値:(-)
(+)⇒無症候性キャリアまたは慢性B型肝炎の非活動期であり、感染性が弱い
HBc 抗体
正常値:(-)
高抗体価⇒現在感染していることを示す
低抗体価⇒HB感染の既往がある
HBs抗原(-)でかつHBe抗体(+)⇒HB感染の既往がある
HCV抗体
正常値:(-)
C型肝炎に感染の有無の判定に用いる
HCVの主要な感染経路は血液・輸血であるため、透析患者では必ず検査することが重要である
フェリチン
正常値:男性17~292ng/ml 女性6~167ng/ml
コントロール値:男性39.4~340ng/ml 女性3.6~114ng/ml
体内の鉄欠乏あるいは鉄過剰状態を反映する
約2/3=赤血球中のHbの成分
約1/3=肝臓・脾臓などの組織内に貯蔵鉄として存在
血算(CBC)
白血球(WBC)
正常値:男性3900~9800/μl 女性3500~9100/μl
コントロール値:4800~8000/μl
高値:感染症(菌球など)、腫瘍、造血器官疾患
低値:感染症(ウイルス)、血液疾患
血液透析開始後15分位に一過性に白血球減少(好中球減少)をきたす
赤血球
正常値:男性427~570万個/㎣ 女性376~500万個/㎣
コントロール値:280~410万個/㎣
骨髄で作られてから120日(腎不全では80日)で破壊される
高値:腎がん、脱水。ストレスなど
低値:造血障害など
ヘモグロビン(Hb)
正常値:男性13.5~17.6g/dl 女性11.3~15.2g/dl
コントロール値:10~12g/dl
鉄とグロブリンという蛋白質が結合したもの赤血球に含まれる血色素量
肺でのガス交換に重要な役割を担う
ヘモグロビン(Hb)
透析患者では主としてEPOの産出低下により正球性貧血(腎性貧血)となる
透析患者の90%以上で遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤の投与により貧血が改善する
高値:多血症、赤血球増多症(血液濃縮)
低値:貧血
ヘマトクリット(Ht)
正常値:男性39.8~51.8% 女性33.4~44.9%
コントロール値:28.0~35.0%
血液中に赤血球が占める容積比率
低値:血管外喪失(出血)、過剰崩壊(溶結性貧血)、産生減少(再生不良性貧血など)
Htが前回値より低い場合⇒消化管出血を疑う、便の色を聞く
血小板(PLT)
正常値:男性13.1~36.2万個/㎣ 女性13.0~36.9万個/㎣
コントロール値:15~40万個/㎣
出血した時に血栓を作り止血する
透析患者では血小板数は正常だが、血小板凝縮能、血小板粘着能などの機能低下のため易出血性を示す
高値:慢性骨髄性白血病、脾臓摘出など
低値:悪性貧血、肝硬変など
凝固検査
出血時間
正常値:2~4分
耳たぶに刺し行う簡便な止血能検査
血小板数とその機能に最も影響される
透析患者⇒軽度延長傾向(血小板の機能低下や血小板剤使用による)
凝固時間
正常値:6~15分
静脈から採取した血液が試験管内で流動性を失うまでの時間
透析時にはヘパリンを抗凝固剤として用いるため凝固時間が延長する
トロンボテスト(TT)
正常値:70~130%
経口抗凝固剤(ワーファリン)投与の指標⇒最近ではPT-INRを用いる
ワーファリンはビタミンK代謝を阻害し、凝固因子の血中レベルを低下させ抗凝固作用を発揮する
そのため、ビタミンK欠乏症の診断や肝障害の検出にも用いられる
PT(プロトロンビン時間)
正常値:PT 80~120% PT-INR 1.0±0.1
コントロール値:PT-INR 1.5~3.5
出血傾向の予防に用いられる
透析実施前にPT値などに異常がある場合は抗凝固剤の投与量の調整が必要
高値:先天性凝固因子欠乏症、ネフローゼ症候群、重症肝障害など
フィブリノーゲン
正常値:200~400mg/dl
凝固異常のスクリーニングを用いる
主に肝臓で生合成される血漿蛋白で血栓形成の主体となる
700mg/dl以上で血栓形成傾向が現れやすい
高値:感染症、心筋梗塞、脳血栓、糖尿病、腎疾患(ネフローゼ症候群など)
血液ガス
血液中に含まれる酸素や二酸化炭素の量あるいはpHを測定する検査
通常は動脈血を測定
目的
- 透析により身体を弱アルカリ性に保てているかを調べる
- 肺における酸素化を調べる
- 体内の酸・塩基平衡を調べる
pH 7.4
HCO 21~26mEq/L
PaO₂ 73~108mmHg
PCO₂ 32~46mmHg
SaO₂ 95~98%
BE -2~2mEq/L
血液ガス検査
透析患者では代謝性アシドーシスとなるが、呼吸性代賞のため必ずしもpHが7.35以下にならない
HCO₃が代謝性アシドーシスの最も良い指標
HCO₃が低値であれば、重炭酸ナトリウム投与、血液透析による補正が必要
採血の注意
透析開始に専用のシリンジに2ml採取し氷中に保存
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