透析看護って何するの?(基礎知識)

かんちゃん
透析について学ぶにあたりまず、腎臓の働き方、透析の原理、透析患者の食生活、合併症、薬剤について理解していきましょう。

腎臓の働き

1.老廃物の排泄

2.水分の調節

3.電解質の調節

4.血液を弱アルカリ性に保つ

5.造血刺激ホルモン(エリスロポエチン)の分泌

6.ビタミンDの活性化

7.血圧の調節(レニン分泌)

8.不要になったホルモンの分解・排泄

なすちゃん
24時間365日働いてくれる腎臓にはこんなに沢山の働きがあるんですね!

腎不全とは

腎不全とは腎臓の働きが、正常の30%以下(血清Cr3mg/dl以上)に低下した状態をいいます。

急性腎不全

数時間から数日の経過で、腎不全になり生命を維持していくことができなくなった状態を急性腎不全といいます。適切な治療によって、腎機能は大部分回復します。

慢性腎不全

数年から十数年以上の長い経過で、徐々に進行し腎不全になった状態を慢性腎不全といいます。いったん慢性腎不全になると腎不全になると腎機能は回復不可能になります。

なすちゃん
腎不全には大きく分けて2種類あるんですね。

血液透析の原理

物質の取り除き方・補われ方

血液透析では、ダイアライザーの中で、血液と透析液が半透膜を介して接することにより、体の中にたまった尿毒素が捨てられ、体に不足している物質が補われます。

ダイアライザーの中には、半透膜という薄い膜が入っており、これを特殊な電子顕微鏡でのぞいてみると、小さな無数の穴があいているのが分かります。

この穴を通っていろいろな物質が出入りしますが、物質の大きさによって、膜の穴を通るものと通らないものがあります。

穴を通るもの

尿毒素(尿素窒素・クレアチニン・尿酸・β2ミクログロブリンなど)

電解質(Na、K、Ca、Pなど)

穴を通らないもの

赤血球、白血球、蛋白(一部は通るものもある)、細菌、ウイルス

なすちゃん
こんな小さな物質が移動してるなんて驚きです!

拡散の原理

膜に小さな穴があいてるだけで、なぜ物質の移動がおこるのでしょうか。

それは「半透膜を境にして濃度の異なる溶液を入れると、中の物質は、自然に混ざり合って均一になろうとする」現象がおこるためです。

これを拡散といいます。

なすちゃん

なるほど!でも透析ではよく水分を取り除く除水って言葉を耳にするけど

体内に貯留した水分はどのようにして取り除かれるのでしょうか?

かんちゃん
それは、限外濾過や浸透圧によって取り除かれます。

限外濾過

血液透析では、「機械的に圧をかけて水を取り除く」限外濾過の原理を応用して、体にたまった水分を取り除きます。

これには、陽圧と陰圧があり、透析液供給装置によって異なります。

現在では、陰圧による方式が主流になっています。

陰圧

透析液側に引っ張る圧力をかけて、水を吸い出す方法を陰圧といい、それはちょうどストローでジュースを吸うのに似ています。

浸透圧

「半透膜を境にして、濃度の異なる溶液を入れると、水は濃度のうすい方から濃い方へと移動する」この水を引きつける力を浸透圧といいます。

血液と透析液の流れ

血液は血液ポンプによって、動脈側穿刺針から取り出され、一定量ダイアライザーに送られています。

ダイアライザーに入った血液は、ダイアライザーの赤い方から青い方へと向かって半透膜の内側を通ります。

一方、透析液供給装置から送り出された透析液は、ダイアライザーの青い方から赤い方へ向かって、半透膜の外側を通っています。

このように血液と透析液はそれぞれ反対方向に向かって流れています。

ダイアライザーできれなった血液は、静脈側血液回路を通って体内にもどります。

ブラッドアクセス(バキュラーアクセス)とは

血液透析を行うには、血液を身体の外に出し、ダイアライザーを通して、きれいになった血液を、再び身体に戻すことが必要です。

このような「血液の出入り口」をバスキュラーアクセスと呼びます。

バスキュラーアクセスには、いくつか種類がありますが、動脈と静脈を体内でチュ直接つなぎ合わせた「シャント」が最も多くも用いられています。

シャントは透析をするためになくてはならない大切なものです。

そのシャントを長持ちさせる秘訣は「閉塞・狭窄」「感染」出血」を予防することです。

透析患者の食生活

透析食のポイント

1.バランスの良い食事をする

2.熱量を適切にとる

3.たんぱく質は必要量を守る(過不足に注意する)

4.水分を控える

5.食塩は1日6g以下にする

6.カリウムをとりすぎない

7.リンをとりすぎない

バランスの良い食事のポイント

1.偏食をしない

2.1日3回、規則正しく食べる

3.1日に多くの種類の食品を食べる

4.主食と副食を必ずとる(うどんのみや、トーストのみで済ませない)

5.副食は、たんぱく質の食品と野菜とを組み合わせる

6.ある食品が体に良いからといって偏ってとりすぎない

7.毎日、同じ食品ばかりをとらない

8.料理に手をかけ、いろいろな材料を使う

9.1日の必要食品量を覚えておく

なすちゃん
水分摂取量や食事管理は大切なんですね!
かんちゃん
因みに、排尿のある患者さんの1日の水分摂取量は1日の排尿量+500mlぐらいが目安です。

透析中の合併症

不均衡症候群

血液中の尿毒素と脳細胞内の尿毒素の取り除かれる時間に差があるため、血液と脳の間に温度差を生じて脳圧が亢進しいろいろな症状がでます。

原因

・電解質・尿毒素の変動、水分の変動

症状

・全身の脱力感、頭痛、悪心、血圧上昇、血圧下降、けいれん

予防

・水分、塩分の制限

処置と対処

・導入期はゆるやかに透析をする(ダイアライザー、血流量の調整)

・頭痛時は鎮痛剤を服用する

・高浸透圧の点滴

長期透析中の合併症

心・血管系合併症

透析者の死亡原因として心不全、心筋梗塞、脳血管障害などの心臓・血管死であり、全体の40%を占めます。

また、加齢による動脈硬化のほか、糖尿病、高血圧、血管や心臓の弁への異所性石灰化、体液貯留など心・血管系への負担が長期に持続していることが原因です。

消化器系合併症

消化管出血とは、胃腸などの消化管からの出血をいいます。透析不足やストレスなどが原因となり、消化管の粘膜が弱くなり、あれて出血しやすくなります。

カルシウム・リン代謝異常

透析をしている人は骨がもろくなり骨折しやすくなったり、また、骨以外の場所にカルシウムが沈着したりします。

感染症

腎不全の人は免疫機能が低下しているため、感染に対し抵抗力が弱いといわれており、肺炎や肝炎にかかりやすいです。

日ごろから感染予防に心がけることが大事です。

透析アミロイドーシス

腎不全になると尿中に排泄されるはずのβ2ミエログロブリンとよばれる大分子の毒素が体内に蓄積します。

長期に透析を行っていると、これが繊維をつくりアミロイドという物質になって全身の骨・関節周囲・内臓に沈着して様々な病態を引き起こします。

透析療法と薬

腎臓の働きを補うための薬

透析の補助的な役割をする薬

1.リン吸着薬

食事中に含まれるリンを吸着し、体内に吸収されないようにする薬です。

腎臓の働きが悪いと体内にリンがたまりやすくなります。

通常、リンは体内においてカルシウムとバランスをとって、骨をつくる役割をしていますが、一定量以上のリンがたまると、リンはカルシウムと結晶をつくり、これらが関節のまわりや血管など骨以外の場所にたまり、体にさまざまな症状をひきおこします。

2.高尿酸血症治療薬

体内で尿酸が作られるのを抑える薬です。

尿酸とは通風の原因となる物質で、通常は腎臓から排泄されますが、腎臓の働きが悪いと体内に蓄積する。

透析によりかなり除去できますが、それでも値が高くなる場合に服用します。

3.利尿薬

尿を出しやすくし、体の中の水分量を減らす薬です。

尿が体の中にたまると、水分量が増えるのに伴って、むくみが生じたり、心臓や血管に負担がかかり高血圧になります。

4.カリウム吸着薬

腸の中に存在するカリウムを吸着して、そのまま便として排泄することにより、体内にたまったカリウムを減らす薬です。

腎臓の働きが悪いと体の中にたまる。

通常の量を超えて、体内にカリウムが存在すると、しびれや吐き気、不整脈をおこします。

透析では代行できない腎臓の働きを補うための薬

1.造血刺激ホルモン(エリスロポエチン)

貧血を改善するために使用する注射薬です。

元々、体の中に存在するホルモンで、血液の成分である赤血球をつくるのに必要です。このホルモンは腎臓で産生されますが、腎臓の働きが悪いと作られなくなり、結果として赤血球ができなくなるため、貧血を起こしやすくなります。

通常は週に3回(透析終了時に)透析機械の回路から投与しますが、1~2週に1回だけの投与でよい薬も登場してきています。

2.活性型ビタミンD3製剤

腸管からのカルシウムの吸収を助け、血液中と骨のカルシウムのバランスを正常に保つ薬です。

活性型ビタミンD3はビタミンと名前がついていますが、ホルモンの一種です。

ビタミンD3は肝臓と腎臓それぞれの助けによって活発な状態にならないとその働きが現れません。

腎不全の人はこの働きが失われているために、ビタミンD3の活性化が行われず、血液中のカルシウムが不足する。

その結果、徐々にもろくなります。

3.降圧剤

血圧を下げる薬。高血圧の状態が長く続くと、脳血管障害や虚血性心疾患、動脈硬化などを発症する危険度が増します。

高血圧の原因は、水分や塩分の取りすぎが挙げられますが、それらに加えて、透析をしている人は、体液量の増加も高血圧の原因になります。

透析中に必要な薬

1.坑凝固薬

この薬は血液が固まるのを防ぐ目的で使用する注射薬です。

血液は血管の外に出た後、しばらくすると固まります。

これは血液中の血小板という成分の働きによるものです。こ

れは透析においても同じで、抗凝固薬を用いずに、血液を体の外に出して循環させていると、そのうち血液は固まってしまいます。

2.抗血小板薬

血小板の働きを抑えることによって血栓ができるのを予防する薬です。

透析をしている人は血小板によってシャントが閉塞する恐れがあります。

3.ワルファリン

血液が凝固するのに関わっているビタミンKの働きを抑えることで、抗凝固作用を示します。

人工血管に血栓ができるのを防ぐ目的で服用します。

4.昇圧剤

血圧を上げる薬です。

透析をしている最中に、急激な除水などで低血圧になることが時々あります。

そこで、この薬を透析中または透析前後に服用して、透析による低血圧を予防します。

5.リドカインテープ・ペンレステープ

シャント穿刺時の痛みを和らげるために使用する貼り薬です。

局所麻酔薬のリドカインを含有しており、穿刺する30分~2時間前に穿刺部には貼付すると効果的です。また、テープが肌に合わないといった方にはエムラクリームなどの塗るタイプの麻酔薬もあります。

なすちゃん
凄く勉強になりました。透析って奥が深いのですね。
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